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すなわち、粒度から考える方法と保水性から考える方法である。
 粒度が粗くなれば液状化が起こり難くなる。これは土質力学における常識である。しかし、どの程度粗くなれば起こらないと判定できるかは、決められない。なぜならば、外力の大きさに依存するところが大きいからである。ばら積み貨物の船舶輸送においては、外力は既定され、また、積み込み時に乱れた状態になり、その後には圧密はあまり進行しない。これより、液状化に関する考え方は極めて楽になる。本研究では、輸送実績を勘案して、有効径により「液状化物質でない」と判断されるクライテリアを作成した。ここで注意しなければならないことは、この判定が輸送実績と実験に基づいて開発され、学問的な分析によったものでないことに注意せねばならない。始めに述べたように、現象が極めて複雑であるので、学問的な分析は必ずしも合理的な結果をもたらさないからである。
 第2のアプローチは、保水性の悪い貨物は、水分がビルジに抜けて、飽和度が下がり液状化が起こり難いという事実を利用している。運送許容水分値を定めるプロクター法はこれを利用しているのだが、ここでも同じ考え方を導入して、自然な状態で飽和度70%以下にしかならないような物質は、液状化しないと判断して良いとしている。
 上記2つの判定方法は、規定されている液状化物質を、「液状化物質でない」と判断しないことを確認している。また、判定基準は、安全側に策定されている。その点で、新しい計測法として十分なものと考えられる。しかし、あくまでも輸送実績を勘案して決定されているので、実績に基づいてその良否を問うことが今後の課題である。
 本手法は、1997年2月24日〜28日に開催されたIMOの第2回DSC小委員会において、DSC2/12/1の文書として提出されている。具体的には、開発した手法をMSC Circularとしてばら積み輸送関係者に回章しようとする提案である。しかし、この内容は極めて技術的なものであるので、検討するのに時間を要するという考え方から、各国が持ち帰り、1998年2月に開催されるDSC3において改めて議論することとなった。

 

(5)含水液状化物質運搬船の要件
専用船である含水液状化物質運搬船に関する我が国の現行の基準は、3.6節で述べたように必ずしも合理的とは言えない。一方、4.4節で述べた通り、こうした船舶が備えるべき要件については、IMO-DSC小委員会で今後さらに審議されるものと考えられる。そのため、我が国としては、引き続き情報収集に努め、関係する基準を改正する等の適切な処置をとる必要がある。

 

(6)BCコード付録Aの改正
 液状化物質については、その名前をBCコード付録Aに上げ、明確化することがこれまでのIMOのやり方であった。しかし、付録Aの名前は、輸送に関連する業界の多様性もあって、必ずしも統一のとれた標記にはなっていない。極めて範囲の広い表現であるとか、同じような意味で使われているものがあったりする。一般名詞、業界にまたがる呼称、特定しづらい言い回し、などが散見できる。また、我が国での液状化関連規則との不整合性も指摘される。

 

 

 

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